
目次
目的
エンジニアリングデザインを通して以下の能力の習得を目的とする。
- 問題設定力、構想力、創造性、種々の学問・技術の統合・応用能力(力学的検討および定量的な評価)、構想したものを図や文章、式、プログラム等で表現する能力
- 経済性・安全性・倫理性・環境への影響等の観点から問題を認識し、これらから生じる制約条件下で解を見出す能力、継続的に計画し実施する能力
- コミュニケーション能力、チームワーク力
材料
- 振動モータ 2個
- 歯ブラシ 4本
- おもり(ペットボトルキャップ+粘土) 1個
- 電池ケース 1個
- 単5電池 4本
- プラ板(B4,0.35mm厚) 1枚
- セロハンテープ 1個
- 紙やすり(#3000) 1枚
レギュレーション
- 動力は、歯ブラシの振動のみとする。それ以外の動力での稼働は認められない。
- 斜面の傾斜は大きいところで20度程度だが、差をつけるために最大傾斜はもう少し大きくする。
- 試技は1回のみとする。
- 最短距離の測定は、スタート地点から振動する歯ブラシ(動力部)の最高到達点までを、センチメートル単位で、小数点以下を切り捨てて行う。
- ロボットが停止、回転し続ける、または後退した場合は、運営側の判断で競技を中止し、その時点での距離を測定する。
- 配布された部品以外は使用しない。ただし、すべての部品を使用する必要はない。
動作原理
モータの駆動により、ブラシが前後や左右に振動する。この際、ブラシの毛先は地面と接触し摩擦を生じる。 この振動により滑りと止まりを繰り返すが、毛先の角度や柔らかさによって摩擦に偏りが生じ、結果としてロボット本体が前進する。
仮説
動力源(電圧)やモータ回転数が固定であるため、エネルギーをどれだけ安定して前進方向に利用するか(左右方向に移動しないか)がロボットの前進の要であると考える。
回転の抑制
機体が回転しないということは角加速度$\omega$が小さいということである。モータによる動力は一定であるため、トルクが$\tau$一定であると仮定すると、次式により慣性モーメント$I_z$を大きくする必要がある。
$$\tau = \omega I_z \tag{1}$$
$$I_z = \frac{1}{12} M (a^2+b^2) \tag{2}$$
- a:車体長さ
- b:車体幅
つまり幅や長さを大きくすれば回転しにくくなるといえる。
ここでは外乱として回転トルク$\tau$を考慮する必要がある。回転トルク$\tau$は以下の式で表される。
$$ \tau = F \cdot d \tag{3}$$
- F:左右の不均衡な力(摩擦差、床の傾きに依る)
- d:Fの作用点と重心(回転軸)との距離
したがって車体幅は小さくしトルクを減らし、長さを大きくするのが直進安定性の向上に効果的であると考える。
また、車体後部に魚の尾のような機構を追加することで回転方向の抵抗や復元力を獲得し、直進安定性の増加が見込まれる。
制作過程
ブラシ2つを一組として2対用意する。それぞれをモーターで駆動する。
足の形
ハの字型
実験結果
- 平面条件下:鋭角方向に前進。ただし機体は大きく右に旋回する。
- 斜面条件下:斜面に対しては滑り落ちるような動作を示した。
考察
回転に関しては左右のブラシの角度のバランスと重心が関与していると考えられる。 機体が右に旋回する場合、以下の2つの説が考えられる。
- 重心の偏りなどで右足の押さえつけによる摩擦が過剰になった結果滑りにくくなり、右側を軸に回転した。
- 重心の偏りなどで左足の押さえつけが足りずグリップ力が低下、結果としてすべりによる前進成分が空回りし左側が先行した。
また、坂を登れない問題はこれらの要因によりエネルギーのすべてを前進に向けられなかったため、坂を遡上するためのパワーが不足していた可能性が指摘される。
課題
前進することは実証できたので、いかに回転を防ぐかが課題である。
平行型
ここで仮説より車体幅を短くするため、ブラシを平行に配置し、間隔の縮小を試みた。
実験結果
- 平面条件下:右旋回要素は含むものの、直進性が向上した。
- 斜面条件下:斜面に対しては直進力を発揮し滑り落ちなくなった。
考察
Fの作用点と重心(回転軸)との距離が減少、さらに平行にした副次的効果として左右差が縮小し左右の不均衡な力Fが減少した。 結果的に回転トルク$\tau$が減少し直進安定性が向上したと考えられる。
課題
最小限の重量にも関わらずパワー不足で坂道を遡上できなかった。
接地面に対するブラシ角度
垂直角
開脚角
ブラシ向き
進行方向に平行
進行方向に直交
回転の抑制
車体の幅と長さ
重心から動力部の距離を短くすれば回転モーメントを小さくできる。